自分のダルマを生きる
「たとえ不完全であっても、自分自身の義務を果たすことは、
他人の義務を完全に果たすよりも優れている」
これはバガヴァッド・ギーターの中で、
クリシュナがアルジュナに語った、非常に印象的な言葉の一つです。
ギーターでは、「ダルマ(義務・使命)」という言葉がしばしば登場します。
これは、単に社会的な役割や職業を指すのではなく、
「魂の本質に根ざした生き方」、つまりこの人生で自分が担うべき、
神から与えられた使命を意味しています。
迷いの中のアルジュナ
ギーターは、戦場という極限の場面から始まります。
戦士アルジュナは、自らの親族と戦わなければならない運命に苦しみ、
武器を捨ててしまいます。
人を殺すことは悪ではないか、戦わずに生きる道はないのか――
その迷いの中で、クリシュナは彼に告げます。
「あなたの義務は戦士として戦うこと。
それがあなたの魂の道なのだ」と。
ここでの教えは、自分が果たすべき役割から逃げずに、
たとえ苦しくともその道を歩むことが、
最も尊い行為であるということです。
他人の道を歩まない
私たちはしばしば、他人と自分を比べてしまいます。
あの人のようになりたい、この仕事の方が評価される…と。
でもギーターは言います。
「他人の義務を立派に果たすよりも、
自分の道を不完全でも歩むことが価値あることだ」と。
これは、自分にしか果たせない使命があるということ。
そして、それを生きることでこそ、
魂は成長し、世界に調和をもたらすのです。
「いま、ここ」で与えられた役割を愛する。
もしかすると、今の仕事や人間関係、
人生の状況に不満を感じているかもしれません。
けれど、それらのすべてが「魂の進化のために」
用意されたステージだとしたら?
ギーターは、
「いま、ここで与えられているダルマを尊重し、恐れずに生きなさい」
と優しく、しかし力強く語りかけてきます。