敵ではなく、メッセンジャーとしてのがん
がんと聞くと、多くの人は「敵」と感じます。
体の中で増殖し、命を脅かす存在、
戦わなければならない相手のように思えるでしょう。
社会の常識では当然そうなりますね。
けれど催眠療法の視点では、
がん細胞は単なる敵ではありません。
むしろ、体や心からのメッセージを背負った
“語り手”として現れることがあります。
催眠下での「対話の体験」がとても効果的です。
催眠状態でクライアントは、
自分を小さくして体の中に入っていくイメージをします。
まるで映画『ミクロの決死圏』のように、
血流や臓器を旅しながら、がん細胞に近づいていくのです。
そこでは、がんを悪者扱いせず、
敬意をもって問いかけます。
「いつからここにいるのですか?」
「私にどんなことを伝えたいのですか?」
「どうすればあなたは静まりますか?」
返ってくる答えは必ずしも言葉ではなく、
色や形、映像、感覚、温かさなどとして感じられることもあります。
部屋としてのがんのイメージも有効な手法です。
この方法は米国の有名なヒプノセラピスト「デイビッド・クイグリー」
さんがセミナーで紹介されていました。
この方法では、がんをひとつの「部屋」としてイメージします。
暗い部屋の中に動物や人の姿が現れることもあり、
その存在が患者さんに語りかけてくる場合があります。
時には掃除をするように部屋をきれいにし、
そこから新しい気づきを得ることもあります。
変化のプロセスが自然に起こってきます。
この様にガン細胞を擬人化して対話を重ねていくと、
がん細胞のイメージが少しずつ変わっていきます。
ガン細胞からのメッセージを受け取ります。
今後、どの様に生きて行くのが真にその人らしい、
生き方ができるか。
その様な生き方をすれば、ガンは自らを主張しなくても、
役目を終えて、自然に消退する。
ガンとの和解が成立するのです。
それは「敵」から「自分の一部」への認識の転換。
恐怖の対象ではなく、人生を見直すきっかけをもたらす存在だと気づくことがあります。
結び
がんを「倒すべき敵」ではなく「語り合える存在」として受け止めると、
心の負担は大きく軽くなります。
その安心感が、免疫や自然治癒力を支える力となるのです。
催眠療法は、この対話を安全に導くための扉。
敵意から理解へ、恐怖から安心へ、
そのプロセスの中で、治療と人生に向き合う力が静かに育っていきます。