催眠療法には、ふたつの道がある
催眠療法には、大きく分けてふたつのアプローチがあります。
ひとつは、心の中にある“痛み”や“傷”にそっと光を当てて、
丁寧に癒していく道。
まるで、長い間しまい込んでいた古い手紙を取り出して、
読み直し、涙とともに手放すような方法です。
もうひとつは、すでに心の中にある“光”や“強さ”に目を向ける道。
曇り空の中でも、わずかに差し込む陽の光を探して、
それを育てていくような方法です。
たとえば年齢退行療法では、
つらかった子ども時代の記憶に戻って、
そのときの悲しみや孤独をもう一度感じ直し、
やさしく癒すことがあります。
これは、凍りついた感情を溶かし、
もう一度“流れ”を取り戻すようなセッションです。
一方で、あえてつらい記憶には触れず、
楽しかった思い出や安心できた瞬間に焦点をあてて、
ポジティブな感情を存分に味わうやり方もあります。
それは、心の奥に咲いていた“忘れられた花”を見つけて、
その香りを深く吸い込むような体験です。
どちらの方法も、それぞれに大切な力があります。
どちらが正しいということではなく、
今、その人に必要な“道”を見極めて選ぶことが大切なのです。
だからこそ、セラピストには両方の引き出しが必要です。
時に“影”に寄り添い、
時に“光”を育てながら、
クライアントの心の旅をともに歩んでいくのです。